1 古民家の「再生」でもなく「リノベーション」でもなく、
『#Re古民家™』について。
築100年を超える家や蔵。私たちは、それを「古民家」と定義しています。
古民家に使用されている木材は、すべて国産の無垢材です。
日本の気候風土の中で長い年月をかけて自然乾燥された良質な古木、
それらを解体し組み上げる特別な技術。
それは、私たち日本人にとって、失うと二度と元には戻らない大切な財産なのです。
山翠舎では、これらの財産を現代に活かす活動をすすめています。
ただし、古民家をそのままきれいに再生するだけでは用途が限定されてしまいます。
コンクリート、金属、ガラスといった、クールで無機的な材料に、
古木や古民家の軸組を合わせることで、今までにない表情を持つ空間をつくる。
新しい建築材料や技術を組み合わせて、風雨や気温変化に耐える快適さも手に入れる。
私たちの新たなプロジェクト『#Re古民家』は、“アップサイクル”な活動です。
単に再生するだけでなく、古民家という財産を「再解釈」し「再構成」し「再活性化」する。
活動全体を通じて、サステナビリティの3Rである「Reduce」「Reuse」「Recycle」に貢献する。
山翠舎は、『#Re古民家』プロジェクトを通じてこの思いを実現していきます。
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山翠舎の「#Re古民家™」事業の施工事例集。
多くの写真とテキストでご紹介。
ニューバランスジャパンと安田不動産が協業し、東京・日本橋浜町にデザインスタジオ兼ギャラリー&ストアスペースとして新築した“T-HOUSE New Balance”は、築122年の蔵を移築して作られた建物。
米ニューバランス社、ニューバランス東京デザインスタジオ、建築家、不動産ディベロッパー、工事業者など、それぞれの分野のプロフェッショナルで構成されるこのプロジェクトのために組まれたユニットに、山翠舎は古民家移築と伝統的建築技法のエキスパートとして参画しました。
日米のニューバランスチーム、不動産ディベロッパーが熟考した表現コンセプトを基に、建築家はアイディアを練りそれを図面に起こします。山翠舎の役割はその図面に従い古民家を使ったブランド表現を具現化することでした。プロジェクトは、海外のオーディエンスから見てもわかりやすい日本的な空間を作りたい米ニューバランス社の想いと、「ブランドの文化や伝統を現代的に表現する」というニューバランス東京デザインスタジオチームのミッションが合致したことから始まります。そしてその素材として埼玉県川越の明治期に建てられた蔵を使うことが設計チームに提案されました。
設計チームの出した答えは、蔵の骨組みを新築の建物の中に丸ごと組み上げるという斬新なアイディアでした。山翠舎は求められる未知の領域に、初めこそ戸惑いがありましたが、すぐに社が目指す「日本の伝統文化をカジュアルに使ってもらう」方針と合致するチャレンジと受け止め、アグレッシブにその実現に取り組みます。現場調査から始まり、これまでの経験と持てる技術を駆使し、蔵の解体、倉庫での資材管理、仮組み・保管そして搬送、移築先では述べ3ヶ月の時間をかけて組み立てを行ないました。
記号的でミニマルなホワイトキューブに、空間にさらなる深みを与える古木がもたらす「時間」。モダンでありながらクラシック。相反する2つのストーリーがひとつに紡がれます。古木を使うことは懐古的表現の領域に止まらず、素材の組み合わせやその使い方によって、体験したことのない新たな表現の可能性を秘めています。ご相談から1年2ヶ月の時を経て、「茶室の持つもてなしの精神」などからインスピレーションを得た店名にふさわしい、唯一無二の空間が出来上がりました。このプロジェクトは、参画企業が提供するどのプロフェッショナリティが欠けても成し得ませんでした。山翠舎の持つ伝統的技術と知見は、必要とされればどんな座組の中でも活かすことができる好事例となりました。
新材では表現することが難しい年月の経過によって蓄えられた歴史のようなものが感じられる空間となったと思います。
現代の技術(プレート金物等)を使用せずに腐食部分などを大栓金輪継等の技術で修復・補強できるのは元々の雰囲気を保て、仕上がりも綺麗に納められ良いと思いました。
また、新材の部分の色味を古材の色味に合わせることのできる技術や樹種の選択も良いと思いました。
継手や仕口等の古来の技術を目で見て確認できる資料として残していけるのは、新たな技術や空間表現への流用や応用の参考になるような可能性があるように思います。
緊張感と安堵感。
122年という年月と圧倒的な技術に触れると、それは国籍や文化などを飛び越えて瞬時に心に入ってくるものだと感じました。それは畏怖にも似た緊張感と同時に、普遍性に包まれているような安心感にも近いものではないでしょうか。ニューバランスにも114年の歴史があり、継承していくものと進化していくものを常に考えていきたいと思っています。
また、職人の技術、そしてチャレンジ精神には感動しました。
それは、日本のスタッフだけでなくアメリカ本社のスタッフも同じで、築122年の蔵の建築構造や職人の技術からインスピレーションを得て新しいシューズを開発したほどです。我々ニューバランスもアメリカとイギリスに工場があり、Craftsmanshipを大切に継承していきたいと考えています。職人の技術をどのように現代に活かしていくのか、共通点も多くあるのではないかと思います。
古材の再生や建築の力は、国や文化を越えて人々を感動させるものだと、今回のプロジェクトで再認識しました。日本国内だけに留まらないグローバルな発信をすることで、更にその可能性が広がるのではないかと思います。
新築でもリノベーションでもない「新築+蔵の移築」の融合により、単純な新築では得られない122年の歴史やストーリーを受け継ぎ、また、古材がもつ表情や力強さが空間の決め手となり、新しい価値や共感の創造に繋がったと感じました。
既存土蔵解体後の古材の変形や新築建物へのフィットのための加工作業、職人の皆様の組み上げ作業を拝見し、ダイナミックなイメージの作業の裏側にある緻密で精度の高い技術に大変感銘を受けました。また、職人の皆様の熱い想いが全員に伝わり、棟上げ作業完了時に自然と現場内に拍手が起こったことは忘れられないシーンとなりました。
古民家や古材がもつ雰囲気は、植栽と同じように柔らかでリラックスを与えると感じています。店舗やホテル等で使用されるケースが多いですが、オフィスや住宅でも古材の魅力が活かせる場が今よりもっとあるように思います。
現代の建築工法の中に、古い蔵の部材を移築する事は見た目だけではなく技術的にも新旧の工法の折衷になりました。そういった建築は稀で、T-HOUSEの建物が出来上がるストーリーの中には建築工法にも他に類を見ない魅力が加わったと思います。
最近では建築現場での木材の加工は最小限におさえられ組み立てられますが、今回は事前の工場での調整、現場でのノミなどを使った加工が多くありました。精度の高い技術と、それを可能にするチームワークに大変勉強をさせていただきました。
木材は寿命が短いように思う方もいるかしれませんが、今回のような使用方法であればこの先何年も木材の美しさを体験できると思います。同じようにさまざまなシーンで古木の可能性はあると思います。
道の駅小谷は、 長野県安曇野郡小谷村、国道148号線沿いにある全国でも人気の道の駅。食事処、温泉、売店の3つの施設を持ち、ゆったりと温泉に浸かったあと羽釜で炊いた美味しいごはんや、小谷村・新潟県産物のお土産選びが楽しめます。
施設は2020年に開業20周年を迎え、それを機に売店部分の大改修を実施。デザインと施工を山翠舎が担当しました。オーナーである株式会社道の駅おたり・代表取締役 幾田美彦さんの言葉、「お帰りになるお客様に、心から“来てよかったね”と言っていただける施設」を目指しコンセプト作りが始まりました。
ここには地域住民のほか白馬村に来る観光客など、都市圏から多くのお客様が訪れます。商業施設としてのみならず、自ずと観光施設としての役割も期待されます。そこで我々は訪れたお客様が小谷村を体感できる「山村の佇まいを残す小谷の文化を感じる物販スペース」をコンセプトに、伝統文化を生業とするこの土地の職人たちと空間づくりの協業を行いました。
空間に活かされた小谷に所縁のある天然素材と職人技の数々をご紹介しましょう。
入店し最初に目に入るのは大きな古木の小屋組です。小谷村の古民家を解体した際に出た古木を使い、御歳76歳の中島棟梁を中心に、伝統建築技術を熟知した渡部大工らによって全体の空気感を決めるアイコニックな造作として売り場中央に組み上げられました。
家具の匠・渡部大工は、建物の構造体である鉄骨の柱周りに小谷の天然記念物「乳房の木」をイメージしたコブのある杉の木を制作。小谷を触れて感じるアート作品になりました。
伊勢神宮の式年遷宮も手がける小谷屋根・松澤朋典氏は、レジカウンター背面に北アルプスのジオラマを茅葺で再現しました。稜線が作り出す陰影が空間にアクセントを加えます。
試飲カウンター腰壁には、この地で陶房を営む萩原良三氏の手による小谷の土を使ったオリジナルタイルを。プリントタイルとはひと味違う、洗練された天然の風合いを感じていただけると思います。
小谷の土を使った重厚な土壁は杜氏でもある左官職人・小林幸由氏の仕事。その壁にはこの地に伝わるぼろ織りと呼ばれる裂織の現代若手作家の作品と、明治期の作品を一緒にディスプレイしました。
施主さまの思いを設計コンセプトに昇華し、その地所縁の素材を伝統的技法によって、いま求められるカタチにする。
山翠舎が提供するサービスのもう一つの代表的事例です。
「古木」を使うことで生まれる空間の魅力は
どうお感じですか?
ご来場されたお客さまが、館内に佇むだけで上質な
空間に溺れてしまう深み。
小谷の職人の技(茅葺アート、陶芸(タイル)、
左官壁など)が空間にもたらす魅力は?
豊かな大自然、反面厳しい環境のなか脈々と受け継がれた
手仕事が、村人の生きる工夫や知恵を醸していると思います。
プロジェクトを通じて、工夫したこと、難しかったこと、感じたやりがいは?
工事は設備や電気・大工など様々なパートが緻密に重なって進みますが、手仕事の職人の方達は
唯一無二の作業のため、タイミングや仕上がりが測れないため綿密な打ち合わせと立ち会いが
必要だった。ただ、その作業は、他では体験できない作業が多く、貴重な経験でした。
「古木」を扱うための伝統的な木造建築工法に対する印象
施主として、毎日の工程を観ている中で、設計図面には表記されていない「技」が積み重なり、
完成予定パースに近づいて行くことが不思議でした。
新しい「道の駅 小谷」は、様々な職人とのコラボレーションで実現しました。
そのプロジェクトの感想をお話しください。
職人の方達自身が仕上がりに納得の行く事は、アートの領域だと体感しました。来館者が
完成した空間を体感することで、心をほぐし、魅力ある施設と感じていただけます。
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山翠舎の「#Re古民家™」事業に関して、
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